東方我楽多叢誌(とうほうがらくたそうし)は、世界有数の「同人」たちがあふれる東方Projectについて発信するメディアです。原作者であるZUNさんをはじめとした、作家たち、作品たち、そしてそれらをとりまく文化の姿そのものを取り上げ、世界に向けて誇らしく発信することで、東方Projectのみならず「同人文化」そのものをさらに刺激する媒体を目指し、創刊いたします。

     東方我楽多叢誌(とうほうがらくたそうし)は、世界有数の「同人」たちがあふれる東方Projectについて発信するメディアです。原作者であるZUNさんをはじめとした、作家たち、作品たち、そしてそれらをとりまく文化の姿そのものを取り上げ、世界に向けて誇らしく発信することで、東方Projectのみならず「同人文化」そのものをさらに刺激する媒体を目指し、創刊いたします。

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【東方ニコレクションSSコンテスト選集】春×ニコニコ×30年

Fio

テーマ

「ニコニコ」「30年」

【東方ニコレクションSSコンテスト選集】 作者:Fio / テーマ:ニコニコ・30年

「東方ニコレクションSSコンテスト」について

 2026年3月18日から4月5日にかけて開催された「東方ニコレクション」内企画「東方SSコンテスト」。今回は「春」「ニコニコ」「30年」の3つがテーマとして設けられ、参加者たちはそれぞれ好きなテーマを選び、SS作品を執筆しました。

 投稿作品数は、フォーム部門・Xポスト部門をあわせて150作品以上にのぼり、多くの東方ファンから応募が寄せられる盛況ぶりとなりました。

【東方ニコレクション・結果発表】東方ショートストーリーコンテスト受賞者発表!

受賞作品を掲載した本と朗読CDを5月4日例大祭で頒布いたします

 ▲受賞結果については、こちらの記事にて公開されています。

 その中から選び抜かれた受賞全11作品を、我楽多叢誌にて順次掲載していきます。

 今回掲載するSS作者はFioさん、作品のテーマは「ニコニコ」「30年」です。

 それでは、どうぞ!

 

作者:Fio テーマ:「ニコニコ」「30年」

紅魔館の図書館。

 

「パチェ、暇~」

レミリア・スカーレットは書斎に鎮座するパチュリー・ノーレッジに声を掛けた。

「退屈で死にそうなのよ。なにか面白い事はない?」

だが、知識の魔女は相手にせず、黙々と本を読んでいる。

「ねぇ、親友が訪ねたんだから構いなさいよ。相手してくれるまで帰らないわよ」

パチュリーはため息を付き、顔を上げて本を閉じた。

「…そこまで言うなら、退屈の方が良かったと思うくらい忙しくしてあげるわ。

けど、本当にいいのね?当分はそんな状態が続くけど」

「構わないわ!」

パチュリーは渋々魔導書を取り出す。

「これは潜在能力を『ずらす』魔法よ。貴方は『運命を操る能力』があるわよね?これを少しだけずらしてあげる」

レミリアはよく意味が分からなかったが、退屈が紛れるならと了承した。

 

―翌日。

レミリアは博麗神社に遊びに行くため、日傘を差して空を飛んでいた。

が、急速に雲行きが怪しくなる。ぽつり、ぽつりと雨が振り出し、やがて土砂降りとなった。

「あれだけ天気が良かったのに…!」

流水に弱い吸血鬼にとって致命的だ。慌てて地上に降り、樹の下で雨宿りし、九死に一生を得た。

 

―更に翌日。

「―紅茶がない?」

「はい、どうやら在庫切れのようで…」

レミリアが素っ頓狂な声を上げ、メイド妖精が申し訳なさそうに頭を下げる。

「じゃあ咲夜に頼んで買ってきて頂戴」

「メイド長は今外出中です…それに現在、白黒の魔法使いの侵攻を受け、全員手一杯で…」

レミリアは大きくため息を付いた。

「もういいわよ。私が行くわ」

その後、道中でチルノに絡まれたり、人里でも紅茶が品切れで方々を回ったりと、散々な目にあった。

 

以後、レミリアの周りでは小さな事件が頻発した。

そんな日々が続き、ストレスは募っていく。

 

「パチェ!もういいわ!魔法を解いて頂戴」

レミリアは音を上げ、親友に縋る。

「悪いけど、あの魔法は三十年間続くのよ。しかも時間経過でしか解けない」

パチュリーは本に視線を落としたまま、無慈悲に告げた。

「…は?」

レミリアは青ざめた。

「言ったでしょ。当分は続くって」

「三十年だなんて聞いてないわよ!」

「でもどうしようもないわ。まあ、大人しくしてなさい」

パチュリーは内心でほくそ笑んだ。

実は魔法はいつでも解除可能だった。が、少し懲らしめよう、という悪戯心だったのだ。

 

やがて日々を過ごす内に、レミリアはある程度の傾向を掴んだ。

事件は自分の望みに連動する。つまり何も望まなければ何も起こらない。

自然と我儘を控え、当主として節度ある振る舞いを心がけるようになった。

 

―あれから数ヶ月後。

「…レミィ、貴方大分変わったわね」

パチュリーが言う。

「ええ。以前の私がどれほど自己中心的で迷惑を掛けていたか、よく分かりました。有難う、パチェ」

その穏やかな物言いと微笑に、パチュリーは思わず目を見開いた。

 

「実はもう、魔法は解けてるのよ。貴方に反省を促すための嘘だったの。

だからもう、その気味悪い口調はやめて頂戴」

パチュリーはバツの悪そうに目を逸らしながら告げる。

「何故?私は過去を顧み、生まれ変わりました。今の私こそが正しい姿なのです」

レミリアは胸に手を当て、確信に満ちた笑みで目を輝かせた。

 

まさか、本当に矯正されてしまった…?

パチュリーは深く考え込み、悩んだ。だが、どうすればいいのか分からなかった。

 

―更に数ヶ月後。

パチュリーは罪の意識に苛まれていた。自分のせいで、レミリアが変わってしまった事に。

執務室を訪ねる。

「…お願い、元に戻ってレミィ。私が悪かったから…」

絞り出すように言い、俯き、肩を震わせた。

「パチェ…何を言うのですか。むしろ、私は貴方に感謝しているのですよ」

「私のせいなの。あなたを懲らしめようと、嘘をついて…。

以前のように、貴方らしく尊大に振る舞い、我儘を言って周囲を困らせて頂戴。お願いだから…」

懇願するパチュリーの目に、光るものが浮かんだ。

 

レミリアは俯いた。身体が小さく震えた。そして…あはは、と高笑いした。

「…なんてね、どう?アカデミー主演女優賞ものだったでしょ?」

腰に手を当て、ニコニコ顔で告げる。

パチュリーはぽかんとした表情を浮かべた。

「いや~、アンタの顔、鏡で見せてあげたかったわ!『私が悪かったから~』ですって?本っ当に傑作だったわ!」

堪えきれず、腹を抱えて笑い、執務机をバンバンと叩いた。

「ちょっとは反省したかしら?私を騙した罰よ!」

パチュリーは青白い顔を上げた。

「…そう。そういう事だったのね。えぇ、よく分かったわ」

 

―翌日。文々丸新聞では、紅魔館にて謎の爆発事故発生という記事が一面を飾っていた。